TEKI-PAKI コラム

マイクロソフト株式会社
エグゼクティブプロダクトマネージャ
米国PMI認定PMP
琉球大学非常勤講師
相場宏二

第4回:工期短縮で勝つ!

2009年1月23日 更新

コスト削減に直結する工期の短縮

現在、景気の後退に伴いコストの削減が企業における重要な課題になってきています。コスト削減には多くの場合、工期の短縮が必要になります。しかし、例えばソフトウェア開発において、単純にテストや開発の工期を短縮してしまっては品質の低下を招いてしまいます。工期の短縮と品質の向上。この二つの矛盾したニーズを実現するのが、プロジェクトマネジメントです。

工期の短縮には様々な方法論がありますが、もっとも代表的なものがクリティカルパス・メソッド(CPM)と、クリティカルチェーン・メソッド(CCPM)です。

クリティカルパス・メソッド(CPM)

クリティカルパス・メソッドは、現在では様々な目的で一般的に使われる手法です。例えば医療現場では、患者の入院期間の短縮と支出の削減を目的として「クリニカルパス」として導入が進んでいます。クリニカルパスの導入の背景はコスト削減です。アメリカでは1983年からの医療費削減の目的で、老人医療費の支払い方式をそれまでの出来高払い方式から、診療群別定額支払制度に移行しました。定額支払制度では、診断名が決まると医療費が決定してしまうので、病院が収益向上のためには出来るだけ早く患者を退院させることが重要になります。しかし単に早い退院を無理矢理進めると、どうしても医療の質が問題となります。質の向上・患者満足度の改善(サービス向上)とコスト削減という相矛盾することを解決するためになんらかの医療管理手法が必要となり、登場したのがクリニカルパスです。クリニカルパスは、患者には退院可能日程を可視化し、病院にはコストの削減を実現し、医療の規格化による医療品質の向上とミスの削減を実現しました。

スケジュールの最適化(ファストトラッキング)

クリティカルパスの導入はこのように品質を維持しながら、工期の削減を実現する手法です。クリティカルパスとは、「少しでも遅れたらプロジェクト全体が遅れてしまう」タスクをつないだものです。クリティカルパスを見つけ出し、クリティカルパス上のタスクが短くなるように、計画全体をシミュレーションする事で、期間全体を短縮することが可能になります。Project 2007 では、クリティカルパスが自動計算されます。

スケジュールの最適化(ファストトラッキング)

ガントチャート上で、クリティカルパスは赤い線で、一般のタスクが青い線で表示されます。青い線のタスクの時間をいくら短縮しても全体のスケジュールは変わりませんが、赤い線のタスクを短縮すると、プロジェクト全体のスケジュールの短縮になります。赤い線で示されたクリティカルパスの中に、少しでも開始を早めることができるタスクがないかを探して、リソースの稼働状況を確認しながら、タスクの同時実行ポイントを見つける事で工期短縮が可能になります。クリティカルパスを見ることで、何をすれば工期が短縮できるか、一目でわかるわけです。

リソースを調整する(クラッシング)

クリティカルパス上のタスクにリソースを追加することで、工期を短縮することが可能になります。

リソースを調整する(クラッシング)

クリティカルパス上のタスクで、もっともボトルネックになっているタスクを探し出して、そこに空いている担当者や外部の要員を新たに補充することで、工期の短縮が実現します。クラッシングには多くの場合コストの追加が発生しますので、トレードオフを十分考慮する事が必要になります。このようにクリティカルパスを識別することは工期短縮の基本になってきます。

クリティカルチェーン・メソッド(CCPM)

CCPMはゴールドラッド博士によって提唱された制約理論(TOC)に基づくプロジェクトマネジメント手法です。CCPMは既に世界中の生産現場や、建設現場、ソフトウェア開発の現場で活用されています。CCPMでは、CPMを更に進化させ、人間の心理的な行動特性にも注目した考えかたになっています。

例えば、プロジェクトの不確実性に対処するために、担当者は必ず計画を立てる時点では安全余裕を見込んで見積もりをしています。更にはその上司も営業担当者も、それぞれ少しずつ余裕を見込んで見積もりをしていくために、最後にできた計画には非常に多くの無駄が潜んでいるわけです。しかし、そんなに無駄な余裕があったとしても、プロジェクトは決して予定より早く終わりません。

CCPMによる期間短縮

パーキンソンの法則によると、人は与えられた予算と時間はすべて使ってしまいます。もし予定工数の前に仕事が終わってしまったとしても、不要な手直しをおこなったり、足を書き加えたりして、納期がくるまで仕事をしてしまいます。逆に予定よりも早く終わってしまったり、少ない予算で終わらせてしまうと次回から予算が減らされかねません。 また十分に時間があると、人はぎりぎりまで業務に着手しない学生症候群があります。学生の宿題、テスト日までに時間の余裕がありすぎると、別のことに取り掛かってぎりぎりまで着手しません。この結果、最後に問題が発生して、納期に間に合わなくなります。このように本来ならもっと削減出来る多くの無駄な時間が、プロジェクト計画の中には散在しているのです。 CCPMは、それぞれのタスクを短縮する代わりに、最後にバッファーを設けて、バッファーで進捗をコントロールする手法です。

プロジェクトの進捗を計る事が可能

CCPM+ のような Project 2007 のアドオンソフトを利用すると、TOC 理論に基づき個々の工程に潜んでいる無駄を排除して、全体工期の短縮を実現します。
CCPM+ではバッファーの消費率を色別に表示する事が可能になります。担当者はバッファー消費率をみる事で、プロジェクトの進捗を計る事が可能です。
「ぎりぎりにならないと着手しない」、「早く終わったけれど次の仕事に移らない」「予定時間いっぱい使って作業をしてしまう」そんな心理的な工期の無駄を排除して最適な工期を実現し、期間短縮を可能にするのが CCPM (クリティカル チェーン プロジェクト マネージメント) のアプローチです。

このように、CPM、CCPMのような工期短縮への取り組みも、Project 2007のようなプロジェクト管理ツールを導入する事でシンプルに実現する事が可能になります。

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